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Toy'sの映画感想ブログです。

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楢山節考
親を捨てるか、子を捨てられるか。


楢山節考



製作年:1983年 製作国:日本 131分
監督:今村昌平
出演:緒形拳、坂本スミ子、あき竹城、倉崎青児、左とん平、辰巳柳太郎、深水三章、清川虹子
    江藤漢、常田富士男、小林稔侍、三木のり平、ケーシー高峰、賠償美津子

第36回カンヌ国際映画祭:パルム・ドール 受賞

【ストーリー】

信州の山深い寒村。いまだ元気に働くおりんだったが、今年、楢山まいりを迎えようとしていた。
それは、70歳の冬に皆、息子に背負われ楢山へ捨て置かれるという村の掟のこと。
神に召されると喜ぶおりんに対し、息子・辰平は気持ちの整理がつかない……。

【感想】

第36回(1983年)カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した今村昌平監督作品です。

深沢七郎の同名小説を映画化した作品で、
1958年の木下恵介監督作品に次ぐ2度目の映画化となります。

久しぶりに日本映画を観て、とてつもなく大きな衝撃を受けました。

現代社会ではありえない、姥捨て、間引き、村八分など、
文明とは程遠い寒村の掟を通して、人間の持つ欲望や残酷さを、とてもリアルに描いています。

そして村人たちに常に付きまとう“死”。
過酷な生活の中で精一杯生きる村人たちは、常に“死”と隣り合わせであり、
常に“死”と向かい合い、常に“死”を感じている。

その“死”の生々しさは、本当に衝撃的でした。
田んぼに捨てられた嬰児の遺体、村の掟を破った家族への報復、
細く荒れ果てた道を一歩踏み外しただけで、そこには“死”が待ち受けている・・・

最初から最後まで映画全体に“死”の臭いと絶望感が漂っていました。

そして、その絶望感と“死”の臭いと共に、
人間の持つさまざまな欲望を包み隠さず、まざまざと見せ付けられます。

過酷な生活の中で必死に食料を蓄える村人たち。
普段の生活の食料と共に過酷な冬を乗り越えるために必要な食料までも確保しなければならない。
家族を養うため、自分自身が生きるために・・・

しかし、人間という生き物はとても愚かな生き物なんだと思える出来事が起きます。
村の掟を破り、他の人々の食料を拝借していた家族に対して村人たちがとった行動。
その残酷な報復は、とても直視して見ることが出来ませんでした。

文明とかけ離れた寒村であるからこそ、村自体の結束力がとても強い。
人間の生死よりも、村の掟が最優先される。
“村社会”の厳しさがとてもリアルに伝わってきました。

その食欲と同じく、人間の持つ欲求のひとつである性欲。
これも、村社会という限られた暮らしの中で生々しく描かれていました。
普通の描き方とは違う、生々しくエロティックな描写は今村監督流なのでしょうね。

過酷な生活の中で精一杯生きている村人たち。
村社会の掟を守り、欲望を満たして生きてる。

物語の間に挿入される蛇や蛾の交尾シーンや蟷螂の共食いシーンは、
まるでこの村人たちを象徴しているかのようでした。

人間とは特別な存在なのか?

虫や動物たちと何が違うのか?

そう問いかけられているように感じました。

しかし、この過酷で絶望感が漂う物語の中で唯一“人間”を感じる存在が、
楢山まいりを迎えようとしているおりんでした。

息子や孫たちの生活のために、自らの命を神へと捧げます。

そして山へゆく前に、おりんがとった行動は全て家族のためでした。
その数々の行動の中に、とてつもなく大きな“愛”を感じました。

おりんは自分のためではなく、息子や孫、家族のために生きていた。

欲望を満たすという人間の本質、生き物の本質をさらに超えた、
真の愛情が、そこにありました。

村の掟に従い母親おりんを楢山へと連れてゆく息子の辰平。
彼もまた心優しく、家族想いな男です。

妻を亡くした彼は母親や息子や弟の面倒を見ながら懸命に働いています。
誰にも言えないつらい過去を背負いながら。

家族のためであっても、自分の母親を山へ置き去りにしなければならない。
辰平の心はとてつもなく苦しかったに違いありません。

愛する家族のために、愛する母親を背負い山へと向かう息子。

愛する家族のために、愛する息子に背負われ山へと向かう母親。

そこに見える、とてつもなく大きな親子愛。

母親を背負い、道無き山を越え、たどり着いた場所。

そこはまさにこの世の場所とは思えないほど壮絶な場所でした。
今もそのシーンが頭の中に焼きついて離れません。
とても衝撃的なシーンでした。

おりんの息子、辰平を演じた緒形拳。
彼の演技力は本当にすごい。
寒村で懸命に生きる一人の村人をとてもリアルに演じていました。
まるで、本当にそこに住んでいる人間かと思えるくらいに。
そして母親を山へ連れてゆかなければならない心の葛藤を、
少ないセリフの中で、体と表情、全てを用いて表現していました。
その圧倒的な演技力と存在感は言葉では言い表せません。

そしておりんを演じた坂本スミ子。
演じた当時は緒形拳とさほど変わらない年齢だったので、
70歳には見えませんでしたが、楢山まいりを迎える歳になっても、
体が不自由になる事も無く健康体であったと言う設定であれば、
無理な役柄ではなかったかなと思います。
この役のために本当に歯を抜いたというエピソードを聞いて、
坂本スミ子という役者魂と、彼女にそこまでさせるような、
この物語のとてつもない深さと魅力をあらためて感じました。

そして、この作品を撮り上げた今村昌平監督。
人間の姿を表も裏も包み隠さず描き、人間本来の姿をさらけ出すことによって、
人間の本質に迫った演出は本当にすごい。
人間を描かせたら今村昌平監督の右に出る者はいないと思います。

姥捨てや村社会を通して、人間という生き物を真正面から描き、
欲望という動物的な本能と、愛情や思いやりという人間的な本能を、
上手く対比させながら描いた今作は、まさに“人間賛歌”なのではないでしょうか?

ここまで人間を描いた作品は今まで観た事がありません。

ここまで人間の本質に迫った作品は今まで出会った事がありません。

深い。とても奥が深い。

そして、凄い。本当に凄い。

もう、このような言葉しか出てきません。

この作品は、間違いなく日本映画の中でも傑作のひとつであると思います。

軽い気持ちでは観る事はできません。
人間の本質、欲望、生と死、そして愛。
人間が持つあらゆる要素が、この映画に凝縮されています。

自分は人間なんだと、当たり前のことを思い知らされます。

とてもリアルであるがために、目を背けたくなる場面が沢山あります。

でも、そこで目をそらしてしてはいけないのだと思うのです。
しっかりと自分の中に、その人間の本質を受け入れる事が大切なのです。

そして、人間の汚い部分や清らかな部分をまじまじと見せ付けられ、
“死”の臭いと絶望感に包まれた物語の先にあるものを感じるのです。

生の尊さを。

生の力を。

生き抜く力を。


評価★★★★★★★★★★(10点満点中10点 …1点)

パーフェクト!!Toy's殿堂入りです!!



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楢山節考

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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

この記事に対するコメント

前回の「うなぎ」のコメントで、今村作品観てないと書いてますが、これと「復讐するは~」と「黒い雨」は観てました。どれもとても印象深い作品ばかりですが、なかでもこの作品は強烈でした。昔の"村"ってこんな感じだったのかと驚きと怖さを感じながら観た覚えがあります。主な出演者は皆個性的な役でしたが、昔話に出てくる姥捨て山とはかなり違う辛いお話でした。老人ホームが同じような存在になっているケースもあると聞きますが、悲しいことです。
応援です
【2008/06/09 23:19】 URL | Whitedog #- [ 編集]


v-275これは衝撃的な映画でした。
役作りで歯を抜いた話、聞いたことがあります。それほど入れ込んだだけあって迫真の演技だったと思います。
思わず目をそむけたくなるような話ではありますが、ますます高齢化していく日本にとって、この話は映画の中だけのことではありません。
今一度多くの人に見て欲しいと思える映画ですね。

【2008/06/10 11:38】 URL | you太郎 #oUPgpoCM [ 編集]


>Whitedogさんへ
「うなぎ」「楢山節考」はカンヌでパルム・ドールをとった作品として有名ですが、
「復讐するは~」「黒い雨」も今村監督作品の代表作として有名ですよね。
この「楢山節考」は自分が想像していたものを超越した凄さ、パワーを感じました。
昔の村社会というのは、本当に凄まじいものだったんでしょうね。
今も自治会や近所付き合いで古くからの伝統を守っているところもありますが、
自分の生活よりも村の掟が優先というのは、なかなかないですよね。
これがほんの100年くらい前の話だと思うと恐ろしいです。
老人ホームがある意味「姥捨て」のようなケースもあるんでしょうね。
たしかに自分たちの生活だけでも大変ですが、人間として、とても悲しいことだと思います。
久しぶりにガツンと体全体に響き渡った作品でした。

応援ありがとうございます♪
【2008/06/10 12:47】 URL | Toy's #- [ 編集]


>you太郎さんへ
とても衝撃的な作品でしたよね。
役作りのために本当に歯を抜いたとうのは驚きでした。
坂本スミ子さんの役者魂も凄いですが、
そこまでさせるほどのこの作品の雰囲気は尋常ではなですよね。
本当にいろんな意味で凄い作品でした。
たしかに、高齢化社会となってゆく日本にとって、映画の中だけの世界ではなく、
現実でも、しっかりと向き合う必要がある内容かもしれませんね。
you太郎さんと同じく、今一度多くの人に観てほしい作品だと思います。
【2008/06/10 12:55】 URL | Toy's #- [ 編集]


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